あれは忘れもしない2017年10月
秋のトラウトシーズンが始まったばかりだった。
その日も夕マズメだけを狙って芦ノ湖に行くことにしていた。
今シーズンは既に美しいレインボーとブラウンを釣っていたから気持ちに余裕があった。
芦ノ湖のモンスターブラウンを狙いに行く
釣り人の少ない平日の夕方、僕の中ではあれこれ試したいルアーのローテーションやアクションのイメージがあって、もう朝からそのことで頭がいっぱいだ。
午前中で仕事を切り上げ、芦ノ湖へ向かう。
傾きかけた陽を斜め左から受けながら東名高速を西へ向かうのは、僕の最も好きな時間の一つだ。
箱根湾の端にある無料駐車場に車を止め、ウェーダーを履き、ポイントへ向かう。
箱根神社下を通り過ぎ、山のホテル下もスルーして、セイケイまで歩くことおよそ20分。午後の陽に紅葉が映える。
湖岸に降りてタックルをセッティングしていると某サンスイのN村氏がボートで現れた。
情報交換をし、今日はここで日没までやることを告げる。どうやら今日ここには誰も来なさそうだ。
何人でやってもいいんだけど、人数が少ないほど自分のイメージで釣りを組み立てることは容易くなる。
いよいよウェーディングし、明るいうちに状況を確かめる。
水位が低く、岸際は浅くなって砂浜ができている。
シャロ―には産卵のためにヒメマスが群れていた。
それに付いてニジマス、暗くなってくるとイワナもその卵を狙ってシャロ―に上がってくる。
キャスト開始後まもなく、40cmほどのニジマスがヒット。
ジャンプを繰り返すなかなかのファイト。無事にランディング。
ヒレの回復した美しいレインボー、幸先いいスタートだ。
さらにミノーを投げているとブラックバスがヒット。
これまたなかなかのファイトで、秋バスらしくコンディションがいい。
芦ノ湖のモンスターブラウンハント、日没を迎える。
普段は暗くなってくると心細くなるが、この日はなんだか自信があったし、辺りが次第に闇に包まれていくのも全く怖くなかった。
それよりもこれから起こることに何か確信めいたものがあった。
しかしそういう時こそ危ないので足元を確認しながら慎重に動く。
辺り一面でライズが多くなってきた。
暗くなれば魚たちはグッと岸に近寄ってくるのでディープウェーディングは不要だ。
浸かるのは足首までの深さにして、手前のブレイクラインを狙う。
南寄りの風がゆるく吹き込み、正面にキャストしたミノーが左にカーブして戻ってくる。
さざ波程度の細かい波が僕の気配を薄くする。
ラインから伝わるルアーのテンションに神経を集中する
デッドスローに巻いているサスペンドミノーが、風に少し引っ張られながらユラリとブレイクラインに差しかかった。
その時、ルアーの近くで小さなベイトフィッシュが立て続けに跳ね、水面がにわかにざわついた。
何かが来ている。
僕は息をのんだーーー。次の瞬間、
「ーーグンっ!」
食った!!!
ロッドがバットからぶち曲がり、暗闇にステラのドラグ音が鳴る。
その瞬間、15mほど先の水面が割れた。
「ガバガバッ!!」
でかっ!やばい!
暗くてよく見えないけど超でかい。
こういう時は自分のタックルを思い出して、自信をもってファイトするのだ。
ロッドはSMITHのインターボロン77、北海道でイトウも釣ったことのある、僕の最も信頼のおけるロッドの一つだ。
リールはステラC3000、最高だ。
ラインはVARIVAS Max Power PE 0.8号、大丈夫だ。
リーダーはフロロ8lb、ここがちょっと危ない。
結束はラインツイスターできっちりやってあるが、劣化してないだろうか?スナップのとこの結び目がさっきのバスの歯に擦れてないかな、結び直しとけばよかったな、なんて思いながらドラグを絞められずに結構走られた。
ロッドもグリップの部分がギシギシいうぐらい曲がって耐えている。
でもこの曲がりが魚を寄せるのだ。
芦ノ湖で経験したことのない重さとその力強い走りで主導権は先方にあったが、寄せては走られを繰り返すうちにさすがの相手も疲れてきたようだ。
次第に横になって水面に浮きぎみで抵抗している。僕は満を持してドラグをちょっとだけ絞めた。
やっとのことで点けたヘッドライトに浮かび上がったのはベリーにかけて黄色がかった薄茶色のボディー、
「ブラウンだ!」
目視するまでロクマルのバスって可能性もあったけど、こいつは間違いなくブラウンだ。
ゆっくりと浅瀬に誘導する。ゆっくりと。
以外に自分は冷静だったし、すべての瞬間を脳裏に焼き付けようとしていた。
魚は最後の抵抗を見せるでもなく、浅瀬に横たわった。
「おおーっっう!!」
僕は何かわからない雄たけびを上げた。
誰もいない湖岸に響く自分の声にはっとして、なんとなく「よっしゃーでかい!」とか言葉を言い直したことに笑いが込み上げてきた。
やった。
ブルブル震える手でメジャーを取り出し、当ててみる。
ーーー72センチ。
3回測った。
72センチをわずかに超えているので72センチ確定。
胴回りを測ろうとしたが魚を持ち上げるときに触って傷つけてしまいそうだったのでやめた。
体高は高く、腹が太く、体が分厚い。
尾の付け根あたりに古傷があり、歴戦の猛者といった風貌だ。メスだけど。
手早く写真を撮り、彼女を湖に戻すことにした。
ずっしり重く、お腹が意外と柔らかい。エサかな、卵かな・・・
魚体を持ち上げようとするとちょっと怖さを覚えるぐらいのサイズ感だ。
頭が浸かる深さに移動してやると、静かに悠々と湖に消えていった。
その波紋を見送ると辺りは静けさを取り戻し、何事もなかったかのように小魚がライズし始めた。
芦ノ湖のモンスターブラウンハントとは。
大きな湖で起こった小さな出来事。
そう、彼らにとっては何事もなかったのだ。盛り上がって興奮してたのは僕だけ。
検量に持ち込めば死んでしまうし、その肉を味わうことに興味はない。
また湖に戻すから、あの時出会えたって言えるのだ。
暗いし魚も動くしでいい写真は撮れなかったけど、ここで起こったすべてのことは深く脳裏に刻み込まれ、大切な経験となった。
芦ノ湖最高。
また彼女と出会えるよう、腕を磨いておくことを胸に誓った。
芦ノ湖モンスターブラウンのタックル
スミス トラウティンスピン インターボロンXX IBXX-77
ミディアムテーパーで良く曲がり、良く寄せます。
シマノ ステラ C3000MHG
バリバス スーパートラウトアドバンスMax Power PE0.8
性能以上に、リールに巻いたときにかっこいいラインですww
バリバス トラウトショックリーダー フロロ8ポンド
ドラグは緩めが功を奏しました。
HNKL K-1ミノーSP 8.5cm
サスペンドをフローティング気味のレンジで使いました。フックを変えることでサスペンド加減を調整できます。
・・・という上記、ご参考までに。
自分なりのストロングパターンがあれば、それが一番釣れると思います!(^^)
ハンクル HMKL K-1ミノーの使い方はこちら
たまたまこのルアーだったと言えばそれまでですけど、使い方にはけっこうこだわってます(^^)
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